2025年1月号
江戸文化を未来へ!江戸東京博物館を楽しもう
江戸東京博物館(江戸博)は、江戸時代以降の近世・近代の東京の歴史をテーマにした博物館です。建物の大規模改修工事のため、現在は休館中ですが、出張展示などが各地で開催されているほか、昔の東京をゲームのように遊びながら学べるアプリもあります。
江戸ってどんな町だったの?そこで人々がどんな暮らしをしていたの?その答えを、「江戸博」が教えてくれます。
江戸を体感!江戸東京博物館の魅力
江戸東京博物館は、徳川家康が来てからの江戸と東京の歴史や文化を学べる都立の博物館です。江戸博は、大きく2つのゾーンに分かれていて、ひとつは江戸の生活・文化を伝える「江戸ゾーン」、そして現代に続く東京の歩みをつたえる「東京ゾーン」で、収蔵している展示は約35万点。
東京はこれまで、いく度も困難に立ち向かってきた街です。江戸時代は「明暦の大火」をはじめ数々の火事に見まわれ、近代・現代になると関東大震災や東京大空襲などという大きな困難をいく度も乗り越えてきました。江戸博は、残された昔の東京の貴重な遺産を大切に守り、未来に伝えていく役割をもっています。2022年4月から休館となり、現在、改修工事が行われています。リニューアルオープンするのは2026年春の予定です。
江戸博に入ると、まず目に入るのは、実物大の「日本橋」という木製の橋。
当時の日本橋は、日本各地へとつながる大きな5本の街道(五街道)の出発点として、ものと人の流れの「中心地」でありながら、江戸東京の文化や生活におおきな影響を与えた「発信地」でもありました。
江戸博の日本橋は実際の橋の北半分を、残されている資料や絵をもとに、正確に再現しています。この日本橋や、江戸・東京のまちなみを立体化したジオラマなどで、当時の様子を体験するように感じられるのが、江戸博の魅力の一つです。2026年春に予定されるリニューアルオープン後も、こうした再現やジオラマは展示の目玉となります。
このほか江戸博では、火事のときに火消し(現在の消防士)が消火の目印に使った「まとい」というものを振る体験や、町なかで商品を売り歩いた「棒手振」という商人の天びん棒をかつぐ体験、江戸時代のお金である小判を入れる「千両箱」を持ち上げる体験なども人気です。
休館中も江戸博を楽しめる館外展示「出張!江戸東京博物館」
江戸博は休館中ですが、こうした収蔵品を別の会場で見られる企画を行っています。
2025年2月22日から26日に上野の東京都美術館で開催される館外展示「出張!江戸東京博物館」は、常設展示の一部をコンパクトにまとめた企画で、江戸博の魅力が詰まった展覧会です。
江戸時代の寿司の屋台を再現した模型や、明治時代の人力車のレプリカなど、実際に触ったり乗ったりできる人気の体験展示が予定されているほか、錦絵や絵はがきなどから上野の歴史を紹介する特別展示もあります。楽しみに待っていてくださいね。
💡その他のイベントはこちらをチェック!
江戸博の学芸員がみなさんの街に、江戸東京の歴史や文化を伝えに行きます。
休館中でも江戸博や江戸文化に楽しく触れていただける展示・体験イベント「どこでもえどはく」を都内ショッピングモール等で開催しています。こどもから大人まで、家族で楽しめるコンテンツをたくさんご用意しています。
江戸博の江戸時代に関連したコレクションが展示され、平和な時代の町づくりや暮らし、経済、文化などを体験できます。
また、東大発の知識集団QuizKnockともコラボし、QuizKnockならではの目線で、江戸の歴史と文化を分かりやすく紹介します。
今年は岡崎市美術博物館と静岡市歴史博物館に巡回し、次回は東北歴史博物館(2025年4月19日(土)~6月22日(日))で開催します。
100点のアイテムを探そう!江戸博をアプリでも
実際に会場に足を運べなくても、江戸博を楽しめます。 「ハイパー江戸博」は、江戸や明治時代の東京をバーチャル(仮想)で体験することができるアプリです。
このアプリは、それぞれの時代を生きるキャラクターになりきり、彼らの視点から歴史をゲーム感覚で楽しめます。博物館が作っているアプリなので、その当時のまちなみや人々の服装、暮らしなどは、資料をもとに可能な限り再現しています。
キャラクターを動かして江戸や東京のまちを探検し、江戸博の収蔵品の中から選ばれた100点のアイテムを探し出して集めます。アイテムはすべて江戸博で紹介しているもので、くわしい解説を読むこともできます。小学校や中学校で学ぶ歴史の授業で登場する収蔵品もたくさんあり、遊びながら、江戸と東京の歴史を学ぶことができます。
第1弾 江戸両国編
第1弾は、「江戸両国編」。
両国橋西詰の広小路(火事を防ぐための幅の広い道)には、珍しい動物や曲芸を見せる見世物小屋、髪結床(今の美容院)や水茶屋(今の喫茶店)などが立ち並び、屋台や物売りもたくさんいて、とてもにぎやかでした。
第2弾 明治銀座編
第2弾は「明治銀座編」。
明治維新後の銀座は、レンガ造りの西洋風の建物が並ぶ、最先端の街になりました。時代が移り変わり、キャラクターたちも成長していくことで、この時代の銀座が急速に変わっていく様子をリアルに体験することができます。
第3弾 日本橋繁昌記 江戸のお金編
第3弾は、「日本橋繁昌記 江戸のお金編」。
江戸時代の日本橋は呉服店「三井越後屋」(今の日本橋三越)をはじめとした大きな店舗の立ち並ぶ商業の中心地でした。そのにぎわいがバーチャルで再現され、仕事や物の売り買いを通じて江戸時代のお金事情を楽しみながら学べます。
そして、現在開発中の第4弾は、人気アニメにも登場する「凌雲閣」とよばれた浅草を代表する背の高い建物など、大正時代に東京で一番にぎわった歓楽街・浅草が描かれることになりそうです。
まるでタイムスリップしたかのようなまちなみを楽しめる「ハイパー江戸博」。ぜひアプリをダウンロードして遊んでみてください。
江戸文化を未来に伝えよう
東京都では、江戸時代の文化や芸能を、こどもの体験を通して未来に残していく取り組みをしています。
子供のための伝統文化・芸能体験事業
「子供のための伝統文化・芸能体験事業」は、学校向けの催しです。伝統文化や伝統芸能のプロ実演家や職人たちが、講師として学校を訪問し、本物の伝統文化・伝統芸能について出張授業をしてくれます。能楽や日本舞踊、三味線、箏、雅楽、落語、紙切り、江戸木版画、東京手描友禅(染め物)など、さまざまな分野で行われています。
キッズ伝統芸能体験
「キッズ伝統芸能体験」は、個人で申し込んで参加する体験プログラムです。小学生が参加できる「スタンダードプログラム」には、能や狂言、日本舞踊のほか、三味線や篠笛、小鼓、箏、尺八といったいろいろな楽器のコースがあります。数か月にわたってお稽古を受け、発表会を目指します(参加費あり)。本物の伝統芸能と出会うチャンスです。
江戸文化は、世界にほこる日本の宝です。みなさんもぜひ伝統芸能とふれ合って、江戸文化の価値を未来に受け継いでいきましょう。
取材協力=江戸東京博物館、東京都生活文化スポーツ局文化振興部
❖江戸東京博物館
2026年春のリニューアルオープンに向けて準備中。公式ウェブサイトでは、江戸博の中を360度自由に見学できたり、収蔵品の検索もできます。
住所 東京都墨田区横網1-4-1