2026年3月号
月面探査車の開発!月が身近になる未来へ
みなさんは「宇宙」について、どのようなイメージを持っていますか。ロケットや宇宙船、無重力、宇宙人を思いうかべる人もいるかもしれませんね。実は、宇宙はみなさんの生活にも深く関わっています。たとえば、みなさんが毎日見ている天気予報は、宇宙にうかぶ衛星からの情報を一部参考にして天気を予測しています。車のカーナビゲーションシステム(カーナビ)は、衛星からの情報によって位置を測っています。スマートフォンで通信ができるのも、宇宙にうかぶ衛星の力がかかわっているんですよ。このように、宇宙産業の発展には、これから私たちの生活をますます便利にしてくれることが期待されています。今回は、東京から宇宙を目指す企業の方にインタビューしてきました。
物づくりの経験を活かして 宇宙へのあこがれを仕事に
「もしかしたら選ばれるかもしれない、という予感はありました」と語るのは、中央区の会社「ダイモン」で月面探査車「YAOKI」の開発に取り組む中島紳一郎さんです。ダイモンは、宇宙にかかわる会社を支援する東京都の取り組みで、今回、支援を受ける会社の一つに選ばれました。
月面探査車とは、月で写真をとったり、資源を集めたりして、月の様子を調べることができる特別な車です。ダイモンの月面探査車「YAOKI」は、長さ15センチ、幅15センチ、高さ10センチ、わずか498グラムの手のひらサイズでありながら、とてもじょうぶであることが特ちょうです。月にある資源などを調べるためにマイナス100度の世界でも動くことができるすぐれもので、2025年3月には、日本の民間会社として月にたどり着き、クレーターを写真におさめることにも成功しました。

小学生のころから、「将来は物をつくる人(エンジニア)になりたい」と心に決めていたという中島さん。人類を初めて月に送ったアポロ宇宙船をテレビで見たことがきっかけで、宇宙にも強い興味を持ったといいます。「小学校低学年のころ、6年生の教室をそうじすることがありました。その教室に、数の単位が書いてある紙がはってあったんです。そのころのぼくは、一、十、百、千、万くらいまでは理解できていたのですが、その先に億や兆、京があるだけでなく、さらにその先にも単位が続いていることを初めて知りました。最後には『無量大数』という、とほうもない数字の広がりがあって、その規模の大きさにワクワクしたのを覚えています。そのころからスケールの大きなものが好きだったのでしょう。ずっとずっと遠くの、宇宙や月も大好きでしたね」
ものづくりへの熱意をつらぬき、自動車部品のエンジニアとして20年以上働いていました。しかし、2011年3月、出張中に東日本大震災を経験。これが、自分の人生についてあらためて考えるきっかけとなったそうです。「このまま自動車部品のエンジニアとして働き続けるのではなく、自分のできることを活かして、こどものころに好きだった宇宙や月にかかわることのできる会社を立ち上げてみよう」と考え、月を走行する車をつくることを決意します。ゼロから会社を立ち上げた中島さん。すべてが順調というわけではまったくなかったと語ります。

1通のメールから月面探査車「YAOKI」が月へ
風向きが変わったのは2017年。アメリカ合衆国が「アルテミス計画」を発表したことでした。アルテミス計画とは、人類を再び月に送り、人類が月で生活できるようになることを目指す計画です。中島さんは、NASA(アメリカ航空宇宙局)の計画をもとに月面着陸を目指すアメリカの会社に、メールを送ったそうです。「ダイモンの月面探査車『YAOKI』は、小型で、転んでも落としてもこわれないほどがんじょうで、熱にも振動にも重力にも強い、といった特ちょうがあること、アメリカから宇宙に向けて発射するロケットにのせてほしいことを書きました。すると、なんと返信がきて、あっという間に、ロケットに『YAOKI』がのることが決まりました」


2025年3月、YAOKIはロケットの先端にある着陸船にのせられて、地球を旅立ちました。月面にたどり着くことはできたものの、着陸船がクレーターでたおれてしまい、YAOKIが月面に降り立つことはできませんでした。しかし、たおれた場所からカメラを起動し、クレーターの中の様子を撮影することに成功しました。
「自動車の仕事で経験してきたことと同じで、月面探査車も、エンジン(モーター)の回転力をいかにタイヤに伝えるかというのがカギ。どんなにでこぼこした場所でも、きちんと走ることができるように工夫しています。月面探査車をつくるのは、こどものころに楽しみながらプラモデルをつくっていたのと同じ感覚で、落としてもこわれないがんじょうなプラモデルをつくっているような気分です」と中島さんは語ります。

月面旅行気分を味わえる?!チャレンジを続ける中島さん
中島さんの次のチャレンジは、カメラだけでなく、月のクレーターの周囲を観察できるセンサーをつけられるように研究を進めていくことです。センサーをつけることができれば、月に大量にあると言われている水資源の発見につながるかもしれません。また、広大な月を走り回るために、YAOKIに無線で充電ができるようにすることも視野に入れています。中島さんは、2029年までに、YAOKIを100基、月に送りこむことを目標にしているそうです。

「100基のYAOKIが月のあちこちでとりまくった写真を使って、月の『地図』を完成させたいですね。また、そのYAOKIをみなさんにも操縦してもらって、まるで月面旅行をしているような楽しさを味わってもらえる時代をつくりたい。日本の会社は、技術力があってもリーダーシップを発揮するのが苦手というケースが多い。でも私たちは、失敗をおそれずどんどんチャレンジして、一番手になろうという意識で仕事をしていきたいと思っています」と話してくれました。
遠くはなれた場所にある宇宙のこと、より身近に感じられましたか?宇宙にかかわる仕事は、これからさらに発展することが見こまれており、東京都でも、すばらしい技術を持った会社の活躍を後押ししています。みなさんが住む東京と宇宙のつながりが深まっていくことを考えると、ワクワクしますね。東京都には、みなさんの生活を豊かにしてくれる会社がたくさんあります。こうした会社の今後の活躍に、ぜひ注目してみてくださいね。
他の特集も見る