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2023年6月号

宇宙うちゅう太陽光発電」JAXAジャクサが研究する“未来の再生さいせい可能エネルギー”

JAXAが開発中!未来の再生可能エネルギー「宇宙太陽光発電」
©JAXA
もくじ

宇宙うちゅうで太陽光発電――。そんなゆめのようなプロジェクトが、JAXAジャクサ(宇宙航空うちゅうこうくう研究開発けんきゅうかいはつ機構きこう) や経済産業省けいざいさんぎょうしょうなどの国の機関を中心に研究されています。巨大きょだいな太陽光発電所を宇宙うちゅうかべて、1日24時間、昼夜や天気に関係かんけいなく大量たいりょうの電力を地上に送る、究極きゅうきょく再生可能さいせいかのうエネルギーとして大きく期待されています。JAXAジャクサ研究開発部門で、宇宙うちゅう太陽光発電システム(SSPS=Space Solar Power Systems)の研究をしている上土井じょうどい大助だいすけさんに話を聞きました。

上土井 大助さん JAXA 研究開発部門 第二研究ユニット SSPS研究チーム 主任研究開発員 熊本県出身。2009年10月からSSPSプロジェクトのエンジニア。子どものころの夢は宇宙の仕事をすること。
上土井 大助(じょうどい・だいすけ)さん JAXA 研究開発部門 第二研究ユニット SSPS研究チーム 主任研究開発員 熊本県出身。2009年10月からSSPSプロジェクトのエンジニア。子どものころの夢は宇宙の仕事をすること。©JAXA

原子力発電所1分の電力を宇宙うちゅう

――宇宙うちゅう太陽光発電の研究は、いつごろから始まったのですか?

1968年、アメリカの宇宙うちゅう科学者ピーター・グレーザー博士はかせとなえたのが始まりです。日本ではやく40年前に研究が始動し、1990年代に宇宙科学研究所うちゅうかがくけんきゅうじょげん宇宙航空うちゅうこうくう研究開発機構きこう宇宙科学研究所うちゅうかがくけんきゅうじょ)を中心に京都大学などと設計せっけい)が進みました。そして2000年代に入ってからJAXAジャクサ経済産業省けいざいさんぎょうしょう)本格的ほんかくてき)な調査が行われるようになりました。

――宇宙うちゅう太陽光発電には、どんなメリットがありますか?

宇宙うちゅうは広く、大気によって太陽光が弱められることもないため、大きなエネルギーを生むことができます。また、地球上が雨やくもり、夜でも、電波を使えば安定的あんていてき効率的こうりつてきにエネルギーを送ることができます。さらに、受けるアンテナさえあれば、送り先を自由にえることもできます。エネルギーをレーザー光を使って送る方法ほうほうもあり、今あるソーラー発電所に送って発電することもできます。

――設備せつびはどのくらいの大きさになりそうですか?

どれくらいの規模きぼにするかはまだ話し合っているところですが、原子力発電所1分(100万kW)くらいの電力を発電できる設備せつびを想定しています。そのためには、やく2キロメートル四方くらいの巨大きょだいな太陽光パネルが必要ひつようで、重さは1万トン以上いじょうになりそうです。今、宇宙うちゅうにある最大さいだい人工的じんこうてき建造物けんぞうぶつ国際こくさい宇宙うちゅうステーションで、はばやく100メートルとサッカー場くらいの大きさで、重さやく340トンですから、けたちがいですね。

JAXAが開発中!未来の再生可能エネルギー「宇宙太陽光発電」
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今のロケットで宇宙うちゅうに運ぶには、何度にも分けて運ばなくてはならず、打ち上げ費用ひよう非常ひじょうに高くなってしまいます。ですから、なるべくコストをおさえるためには、宇宙うちゅう太陽光発電システムの部品の軽量けいりょう化を進めるほか、よりたくさんの部品を運べるロケットや、何回もかえし使えるロケットの開発が必要ひつようになります。

技術ぎじゅつ開発では日本がトップクラス

――日本以外いがいでも、研究は行われているのですか?

巨額きょがく建設費用けんせつひようがかかることや、技術的ぎじゅつてき課題解決かだいかいけつ困難こんなんなことなどから、多くの国では研究が中断ちゅうだんした時期がありました。日本だけは、長く継続けいぞくして研究がつづけられており、現段階げんだんかい技術ぎじゅつ開発では世界でもトップクラスになっています。

しかしながら、大きな予算と多くの人を集めて短期集中的しゅうちゅうてきに研究するアメリカのほか、ヨーロッパ各国かっこくでも最近さいきん、研究開発を進める気運ががってきています。宇宙うちゅう開発に意欲的いよくてきな中国も猛烈もうれついきおいで力を入れてきています。

各国かっこくがしのぎをけずるなか、わたしたちJAXAジャクサ宇宙うちゅうに大きな建造物けんぞうぶつを作るための実証実験じっしょうじっけんをいよいよ来年度から開始する予定です。経済産業省けいざいさんぎょうしょうでもエネルギーを送る技術ぎじゅつのプロジェクトが進められています。規模きぼはまだ小さいのですが、2025年にアメリカ空軍くうぐんが、宇宙うちゅうで発電して地上に送る実験じっけんをする準備じゅんびを進めています。

――どんなことが課題かだいになっていますか?

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イメージ図 ©JAXA

解決かいけつしなくてはいけない問題はたくさんあります。大きな電力を効率的こうりつてきに作る太陽電池技術ぎじゅつ無線むせんで地上にエネルギーを送る技術ぎじゅつ、そして大きな発電所を宇宙うちゅうに作るための技術ぎじゅつなどです。研究は長期間にわたるため、途中段階とちゅうだんかい研究成果けんきゅうせいかを社会に役立て、その上でさらに宇宙うちゅう太陽光発電の研究を進めていくことを目指しています。

実際じっさいに考えているのは、無線むせんでエネルギーを送る技術ぎじゅつ適用てきよう先などです。充電設備じゅうでんせつびがない所でも、移動いどうする電気自動車やドローン、ロボット、スマホなどに、手軽に充電じゅうでんできるようになれば便利べんりですよね。

人類じんるいのエネルギー問題を解決かいけつ?!

――大規模だいきぼなSSPSで本格的ほんかくてきに発電が始まるのは、いつごろになりそうですか?

どのくらいの人とお金をかけるのかでちがってきますが、実用化できるまでには、20年から30年くらいはかかりそうです。日本では、JAXAジャクサ経済産業省けいざいさんぎょうしょう、京都大学などの大学のほか、民間企業みんかんきぎょうでも関連かんれんするさまざまな研究が行われています。産学官さんがくかん協力きょうりょくしあって研究を進めていかなくてはいけません。

まだまだ難題なんだいはたくさんありますが、開発が実現じつげんすると人類じんるいのエネルギー問題の解決かいけつに向けて大きく前進します。みなさんにも興味きょうみを持ってもらい、近い将来しょうらい、わたしたちの研究をいでもらえると、実現じつげんはより早くなると思います。

JAXAが開発中!未来の再生可能エネルギー「宇宙太陽光発電」

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