特集

2023年5月号

ここが東京都?! 車や電車では行けない「都内の宝島たからじま」~小笠原おがさわら諸島編しょとうへん

小笠原諸島の父島にあるコペペ海岸の写真
小笠原諸島の父島にあるコペペ海岸
もくじ

東京都には島があることを知っていますか?これらは東京都島しょ地域
(ちいき)

()
ばれ、大小合わせて200以上
(いじょう)
の島々が
(ふく)
まれています。このうち実際
(じっさい)
に人が住んでいるのは伊豆
(いず)諸島
(しょとう)
の大島、小笠原
(おがさわら)諸島
(しょとう)
の父島など11島です。

小笠原諸島のイラスト

伊豆
(いず)諸島
(しょとう)
のさらに南にある小笠原
(おがさわら)諸島
(しょとう)
には「おがさわら丸」という船でしか行くことができません。かかる時間はなんと24時間。しかも6日に1便
(びん)
だけ。多くの貴重
(きちょう)
な動植物がいる小笠原
(おがさわら)諸島
(しょとう)
人類
(じんるい)
財産
(ざいさん)

(みと)
められ、平成
(へいせい)
23年(2011年)に世界自然
(しぜん)遺産
(いさん)
登録
(とうろく)
されました。
東京だけど車や電車では行けない「東京都の宝島
(たからじま)
」、小笠原
(おがさわら)諸島
(しょとう)
自然
(しぜん)
に近づいてみましょう。

世界の宝島たからじま小笠原諸島おがさわらしょとう

父島の空撮写真
父島空撮(提供:環境省)

小笠原
(おがさわら)諸島
(しょとう)
伊豆
(いず)諸島
(しょとう)
とおなじで、海底
(かいてい)
火山の活動によってできた島々です。南鳥島は日本
(さい)東端
(とうたん)

(おき)

(とり)
島は日本最南端
(さいなんたん)
です。小笠原
(おがさわら)諸島
(しょとう)
はその長い歴史
(れきし)
のなかで、
(ほか)
大陸
(たいりく)
や島と一度もつながったことがありません。そのため、遠く
(はな)
れた場所からたどり着いた生物が小笠原
(おがさわら)
環境
(かんきょう)
適応
(てきおう)
し、この地域
(ちいき)
にしかいない「固有種
(こゆうしゅ)
」に進化した証拠
(しょうこ)
がはっきりと
(のこ)
されています。こうした
(ゆた)
かな自然
(しぜん)
人類
(じんるい)

(たから)
評価
(ひょうか)
され、平成
(へいせい)
23年(2011年)には、世界自然
(しぜん)遺産
(いさん)
登録
(とうろく)
されました。

固有種のメグロの写真
固有種のメグロ(提供:環境省)
オガサワラオオコウモリの写真
オガサワラオオコウモリ(提供:環境省)
アカガシラカラスバトの写真
アカガシラカラスバト(提供:環境省)

小さい島ながらも固有種
(こゆうしゅ)
圧倒的
(あっとうてき)
に多いのが特徴
(とくちょう)
で、メグロ、オガサワラオオコウモリなど19種類
(しゅるい)()
(※)が天然
(てんねん)記念物
(きねんぶつ)
に指定されています。固有種
(こゆうしゅ)
絶滅
(ぜつめつ)危惧種
(きぐしゅ)
のアカガシラカラスバトは、都立動物園の多摩動物公園
(たまどうぶつこうえん)
(日野市)、上野動物園(台東区)や
()

(かしら)自然文化園
(しぜんぶんかえん)
武蔵野市
(むさしのし)
)でも飼育
(しいく)
され、小笠原
(おがさわら)
に行かなくても会うことができます。

※動物・植物ではありませんが「小笠原
(おがさわら)
南島の沈水
(ちんすい)
カルスト地形」も小笠原
(おがさわら)
誕生
(たんじょう)
とも関係
(かんけい)
のある大変
(たいへん)
(めずら)
しい地形として天然
(てんねん)記念物
(きねんぶつ)
に指定されています。

貴重きちょうな「固有種こゆうしゅ」を守っていくために

父島でネイチャーガイドをしている村上美奈子
(みなこ)
さんは「世界遺産
(いさん)登録
(とうろく)
前は、観光客
(かんこうきゃく)
のほとんどは、スキューバダイビングなど海のレジャーを楽しむために
()
ていました。世界遺産
(いさん)
になってからは、山の自然
(しぜん)
も楽しみたいという家族
()
れなどが
()
えています」と話しています。

小笠原
(おがさわら)
で一番の課題
(かだい)
は、固有種
(こゆうしゅ)
保全
(ほぜん)
です。カタツムリなどの「陸産
(りくさん)貝類
(かいるい)
」は100
(しゅ)以上
(いじょう)
固有種
(こゆうしゅ)
(りつ)
94%)が確認
(かくにん)
され、現在
(げんざい)
新種
(しんしゅ)
の発見が
(つづ)
いています。そのうちカタマイマイ
(ぞく)
は木の上、地上、その中間など生息環境
(かんきょう)
に合わせて
(から)
の色や形が
(へん)
化し多くの固有種
(こゆうしゅ)
に分かれています。進化の生き証人
(しょうにん)
ともいえる貴重
(きちょう)
な生物なので世界遺産
(いさん)
認定
(にんてい)
されるにあたっても高い評価
(ひょうか)
を受けました。

固有種のカタマイマイの写真
固有種のカタマイマイ(写真左/提供:環境省)は、300万年前に小笠原にたどり着いて、環境に適応しながら約30種類に進化(写真右/提供:東北大学教授・千葉聡先生)。小笠原世界遺産センター(環境省)のほか、都立動物園(上野動物園、多摩動物園、井の頭自然文化園、葛西水族館)でも保全や展示が行われている

しかし、カタツムリ
(るい)
を食べるニューギニアヤリガタリクウズムシという外来種
(がいらいしゅ)
が1990年
(ごろ)
から父島で増加
(ぞうか)
し、固有種
(こゆうしゅ)
が大きな被害
(ひがい)
を受けました。アメリカ原産
(げんさん)
のトカゲであるグリーンアノールは、昆虫類
(こんちゅうるい)
を食べます。受粉
(じゅふん)

(にな)
昆虫類
(こんちゅうるい)
被害
(ひがい)
を受けると、植物にも大きな影響
(えいきょう)
があります。村上さんは「人の手によって
()

()
まれてしまった外来種
(がいらいしゅ)
を少しでも
()
らし、小笠原
(おがさわら)
にしかない自然
(しぜん)環境
(かんきょう)
のバランス“生態系
(せいたいけい)
”を
()

(もど)
すことが、長い時間をかけて進化してきた固有種
(こゆうしゅ)
や今も進行中の生物の進化を守ることになります」と話しています。

ニューギニアヤリガタリクウズムシの写真
カタツムリ類の天敵、父島の外来種ニューギニアヤリガタリクウズムシ(提供:環境省)
グリーンアノールの写真
外来種のトカゲ、グリーンアノール。侵入エリアが広がらないように試行錯誤している(提供:環境省)
遊歩道の出入口に設置されている粘着ローラーやマットの写真
父島や母島の遊歩道の出入口には、衣服や靴、荷物にくっついた小さな虫や種、土を落とすための粘着ローラーやマット(外来種除去装置)が設置されている(提供:環境省)

小笠原
(おがさわら)
には父島の小笠原
(おがさわら)
小学校と母島の母島小学校の二つの小学校があり、いずれもユネスコの平和の理念
(りねん)
を取り入れた「ユネスコスクール」に加盟
(かめい)
しています。「
(りく)
自然
(しぜん)
」「海の自然
(しぜん)
」「伝統
(でんとう)
文化」など学年ごとにテーマが設定
(せってい)
され、絶滅
(ぜつめつ)危惧種
(きぐしゅ)
のアオウミガメの保護
(ほご)
活動や、アホウドリの生態
(せいたい)
歴史
(れきし)
の学習など、貴重
(きちょう)
な動植物への理解
(りかい)
を深めています。

小笠原村立小笠原小学校
小笠原村立小笠原小学校
小笠原村立母島小学校
小笠原村立母島小学校

授業
(じゅぎょう)
一環
(いっかん)
として、小笠原
(おがさわら)
小学校はすみだ水族館(墨田区
(すみだく)
)に、母島小学校は葛西
(かさい)臨海
(りんかい)
水族園(江戸川区
(えどがわく)
)に、小笠原
(おがさわら)諸島
(しょとう)
で生まれたアオウミガメの赤ちゃんをあずけ、外敵
(がいてき)

(おそ)
われにくい大きさに成長
(せいちょう)
するまで大切に育ててもらい、故郷
(こきょう)
の海へ返す活動を行っています。

アオウミガメの赤ちゃん
小笠原諸島の父島にある「要岩(かなめいわ)」から名付けられたアオウミガメの赤ちゃん「かなめ」(提供:すみだ水族館)
アオウミガメの写真
母島小学校から預けられたアオウミガメ(提供:葛西臨海水族園)


(

小笠原諸島おがさわらしょとうのある東京島しょへはどうやって行くの?

父島の港の写真
父島の港

東京都内だけど遠い場所、東京島しょ地域
(ちいき)
にある小笠原
(おがさわら)
の島々に関心
(かんしん)
を持ちましたか?かけがえのない生き物の楽園を探検
(たんけん)
しに行ってみてはいかがでしょうか。

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