東京の伝統的でんとうてきな祭り

祭りってなんだろう？

みなさんには、毎年楽しみにしている祭りはありますか？地域ちいきの小さい祭りから、京都きょうとの祇園祭ぎおんまつりのように世界的せかいてきに有名な祭りまで、日本では１年を通して、各地かくちでさまざまな祭りがおこなわれています。わたしたちも家族や友だちと祭りを見に行ったり、参加さんかしたりしますね。祭りにかかわる思い出も、たくさんあると思います。

祭りをするためには、多くの時間がかかります。たくさんの人の協力きょうりょくも必要ひつようです。どうしてみんなたいへんな思いをして、祭りをするのでしょう。

それは祭りが人びとの心をささえ、地域ちいきの人と人とをつなげるものだからです。

祭りは、「まつる」ということばが由来です。「まつる」には、神や仏ほとけ、先祖せんぞなどに感謝かんしゃや祈りをささげるという意味があるといわれています。伝統的でんとうてきな祭りの多くは、豊作ほうさくや健康けんこう、平和、商売繁盛はんじょうなどを願ねがう目的もくてきではじめられました。祭りは不作ふさくや病気、死、戦争せんそうなど、自分の力ではどうにもできないことに苦しむ人の心のささえとなり、生きる希望きぼうをあたえてきたのです。

祭りは地域ちいきの人びとが集まって協力きょうりょくする機会きかいにもなるので、日ごろから地域ちいきで助け合う気持ちが生まれます。また、年上の人から年下の人へ、祭りに必要ひつような技術ぎじゅつや芸能げいのう>、知識ちしきが伝つたえられることで、地域ちいきの伝統でんとうが受けつがれてゆきます。

わたしたちのくらしに彩いろどりをあたえ、地域ちいきと人、人と人をつないでくれる祭り。そんな祭りのすばらしさについて、東京で受けつがれてきた祭りを通して考えてみましょう。

これってどんな意味？ 祭りにかかわる言葉

祭りについて知りたい！ その前に、祭りにかかわる基本的きほんてきな言葉のおさらいをしておきましょう。この他にも、いつもは使うことがない言葉が出てきたら、辞書じしょやインターネットなどで調べてみてくださいね。

・氏子うじこ

祭りに参加さんかするなどのかたちで神社をささえる人たち。

大迫力だいはくりょく！東京を代表する浅草あさくさの祭り・三社祭さんじゃまつり

東京都では、各地かくちで個性こせいゆたかな祭りが受けつがれてきました。そのひとつが台東区たいとうくにある浅草神社あさくさじんじゃの祭り、三社祭さんじゃまつりです。

三社祭さんじゃまつりが開かれる浅草あさくさは、江戸時代えどじだいに浅草寺せんそうじの門前町として発展はってんしたまちです。門前には仲見世なかみせとよばれる商店街しょうてんがいがあり、東京を代表する観光地かんこうちとして知られています。浅草神社あさくさじんじゃは、浅草寺せんそうじにまつられている観音像かんのんぞうを見つけた漁師りょうしの檜前ひのくま兄弟と、浅草寺せんそうじをおこした土師はじの真あたい中知なかともの３人をまつる神社です。３人は「三社さんじゃ権現ごんげん」とよばれ、三社祭さんじゃまつりの名前の由来となっています。

祭りは毎年５月の第三土曜日を中心とした金、土、日曜日に開催かいさいされます。１日目は、お囃子はやしが乗った屋台や踊おどり手てが参加さんかする「大行列だいぎょうれつ」があるほか、東京都の無形文化財むけいぶんかざいに指定されている「神事しんじびんざさら舞まい」という伝統芸能でんとうげいのうがひろうされます。この舞まいは、豊作ほうさくや、わざわいをはらうことを願ねがって神にささげるものとされています。

２日目には祭りの式典しきてんがあります。その後、氏子うじこがくらす44の町から約やく100基きの神輿みこしが浅草神社あさくさじんじゃの境内けいだいに集まり、１基きずつおはらいを受けてから氏子うじこたちにかつがれ、各かく町をめぐります。

最終日さいしゅうびの３日目は、三社権現さんじゃごんげんの本社神輿ほんじゃみこし３基きが神社の境内けいだいからかつぎだされます。１基きにつき数百人ものかつぎ手が集まり、威勢いせいのいいかけ声とともに、神輿みこしをあらあらしくゆさぶりながら、１日かけて浅草あさくさの町をねり歩きます。

感染症かんせんしょうに負けない！ ３年ぶりにかつがれた本社神輿ほんじゃみこし

浅草あさくさにくらす人たちは、毎年三社祭さんじゃまつりを楽しみにしています。太平洋戦争たいへいようせんそう（1941～45年）のときには浅草あさくさのまちが焼やけ野原のはらとなり、神輿みこしもすべて焼やけてしまいましたが、戦後せんご、すぐに祭りを再開さいかいし、神輿みこしも新しくつくり直しました。

しかし、新型しんがたコロナウイルス感染症かんせんしょうが広がった2020年と2021年には、人が集まらないよう、神輿みこしはかつがれませんでした。祭りを経験けいけんできない子どもが増ふえるなど、祭りの伝統でんとうがとだえてしまうことが心配されました。

そのようななか、今年は３年ぶりに氏子うじこたちによって本社神輿ほんじゃみこしがかつがれ、「子供神輿こどもみこし」を出した町もありました。浅草あさくさ寿町ことぶきちょう1丁目町会の大熊おおくま俊夫としお会長は、「今年は『わっしょい！』と心一つにして神輿みこしをかつぐ子どもたちの姿すがたを見ることができ、とても幸せでした。来年はより多くの人に参加さんかしてもらい、祭りの伝統でんとうを若い世代につないでいきたいです」と話しました。

三社祭さんじゃまつりに参加さんかした、小学３年生の安藤あんどう慎之介しんのすけさんにインタビュー！

三社祭さんじゃまつりでは、どんなことをしましたか？

子供神輿こどもみこしをかつぎました。三社祭さんじゃまつりにはおじいちゃんもお母さんも参加さんかしていたので、ぼくも小さいころから毎年参加さんかしてきました。今年は３年ぶりに子供神輿こどもみこしをかつげてうれしかったです。

三社祭さんじゃまつりに参加さんかして、楽しかったことやたいへんだったことを教えてください。

みんなで力をあわせて神輿みこしをかつぐのが、いちばん楽しいです。神輿みこしをゆらすと、神輿みこしについているすずが鳴って、とってもいい音がするんです。まつりのときは、まちに屋台が出るので、わたがしを買って食べるのも楽しみです。

神輿みこしは重いので、数十分もかつぐのはたいへんです。人がたくさんいるなかでかつぐので、ぶつからないよう気をつけています。かつぎかたも自分なりに工夫くふうしていて、今年はじめて神輿みこしをかついだ妹にも、こつを教えてあげました。

三社祭さんじゃまつりの開かれる浅草あさくさは、安藤あんどうさんにとってどんな場所ですか？

浅草寺せんそうじや浅草神社あさくさじんじゃのあたりは、散歩さんぽで行くくらい身近な場所です。浅草神社あさくさじんじゃで開かれる「浅草灯籠祭あさくさとうろうさい」には、小学校の夏休みの宿題でかいた絵を使った灯とうろうがかざられるので、毎年みんなで見に行きます。三社祭さんじゃまつりで本社神輿ほんじゃみこしの通り道になる、浅草寺せんそうじの仲見世なかみせにもよく行きます。仲見世なかみせで売られている人形焼にんぎょうやきなど、おいしいものがいっぱいある浅草あさくさが大好だいすきです。

来年の三社祭さんじゃまつりにも参加さんかしたいですか？

来年も参加さんかして、子供神輿こどもみこしをかつぎたいです。大きくなったら、本社神輿ほんじゃみこしをかついでみたいです！

東京都には他にどんな祭りがあるの？

三社祭さんじゃまつりのほかにも、東京にはさまざまな祭りがあります。たとえば、江戸時代えどじだいに幕府ばくふの将軍しょうぐんも見物したことから「天下祭てんかまつり」とよばれていた、神田祭かんだまつりと山王祭さんのうまつりです。この２つの祭りは、２年に１度、交互こうごに本祭が開催かいさいされます。

神田祭かんだまつりは、５月中旬に千代田区ちよだくの神田明神かんだみょうじんで開かれます。もとは秋に収穫しゅうかくを祝いわう祭りでした。「神輿みこし宮入みやいり」の日には、氏子うじこたちがかつぐ大小200基きもの神輿みこしがまちをめぐり、次つぎに神田明神かんだみょうじんにお参まいりします。

山王祭さんのうまつりは、６月に千代田区ちよだくの日枝神社ひえじんじゃで開かれる祭りです。日枝神社ひえじんじゃは江戸時代えどじだいには山王権現さんのうごんげんとよばれ、江戸城えどじょうの守り神でした。祭りの中心となる「神幸祭しんこうさい」では、神輿みこしや山車だしとともに伝統的でんとうてきな衣装いしょうbを着た人びとが皇居周辺こうきょしゅうへんや丸まるの内うち、銀座ぎんざなどをめぐります。

また、多摩たま地区を代表する祭りとして有名なのが、くらやみ祭まつりです。府中市ふちゅうしの大國魂神社おおくにたまじんじゃで毎年４月30日～５月６日に開かれる祭りで、1000年以上いじょうの歴史れきしをもつとされます。多くの山車だしや神輿みこしがまちをめぐるほか、「競馬式こまくらべ」という馬を走らせる儀式ぎしきや、大太鼓おおだいこの演奏えんそうなどがひろうされます。

未来みらいの祭りをささえるのは……わたしたち！

祭りは人びとの心をゆたかにし、地域ちいきの人と人とをつないできました。それは、昭和時代しょうわじだいや平成時代へいせいじだいに町おこしとしてはじまった祭りでも同じです。豊作ほうさくを願ねがって田植えなどのしぐさをする田遊びや、伝統的でんとうてきな舞まいを演えんじる神楽かぐらなど、各地域かくちいきで受けつがれている伝統芸能でんとうげいのうでも、そうですね。

しかし、いまでは伝統でんとうを受うけ継つぐ若者わかものや子どもが少なくなり、祭りに必要ひつようなお金や、神輿みこしをかつぐ人、囃子はやしを演奏えんそうする人などを集めることができない地域ちいきも増ふえています。儀式ぎしきの一部をとりやめたり、他の地域ちいきから人をよんだりして祭りを続つづけている地域ちいきもあります。

みなさんの住む地域ちいきには、どんな祭りがありますか。よく知らないという人は、地域ちいきの祭りや伝統的でんとうてきな行事を調べることからはじめましょう。歴史れきしや伝統でんとうににこめられた願ねがいを知ったら、きっと実際じっさいに見てみたくなるはずです。「自分も参加さんかしたい！」と思った人は、祭りや行事のホームページから申もうし込こんだり、実行委員会に連絡れんらくしたりしてみましょう。伝統でんとうを未来みらいに引ひき継ついでいくのは、みなさんです！