知る・学ぶ

2025年5月号

東京都をささえる仕事❻ 水道緊急きんきゅうたいってどんな仕事?

もくじ

みなさんは、毎日水道の水を使いますね。手をあらったり、歯をみがいたり、飲んだり。みなさんが家や学校で、水がなくてこまったことはめったにないでしょう。それは、きれいな水がみなさんのもとにとどき、毎日安心して使えるよう、日々ささえてくれる人たちがいるからです。

しかし、事故じこ地震じしんなどの自然しぜん災害さいがいなどで水道管すいどうかんがこわれ、家の水道水がにごったり、時には出なくなったりすることがあります。東京都水道局には、そんな予期せぬ事態じたいが起きた時、かけつけてくれる「水道緊急きんきゅうたい」という人たちがいます。この水道緊急きんきゅうたいとは、具体的ぐたいてきにどのような仕事をしているのでしょうか? 水道緊急きんきゅうたい岡部おかべ隊長たいちょうに、お話を聞きました。

東京都水道局水道緊急きんきゅうたい隊長たいちょう岡部おかべさん

東京都の「水道緊急きんきゅうたい」の仕事とは

―水道緊急きんきゅうたいとは、どのような組織そしきですか?

岡部おかべ隊長たいちょう 東京都水道局のもっとも大切な使命は、東京都民とみんや東京都ではたらく人たちに、毎日きれいな水をとどけることです。

「水道緊急きんきゅうたい」は、日本で唯一ゆいいつ地震じしんなどの自然しぜん災害さいがいなどで水道管すいどうかんがこわれたときや水が出なくなったときに出動する組織そしき(チーム)です。主に都内23区を受け持ち、総勢そうぜい100人が昼・夜交代ではたらいています。

インタビューを受ける水道緊急隊の岡部隊長

1966(昭和41)年に、「特別とくべつ作業たい」としてスタート。2004(平成へいせい16)年に起きた新潟にいがた中越ちゅうえつ地震じしんという大きな地震じしんをきっかけに、東京で大きな災害さいがいが起きたときいち早く対応たいおうできる組織そしきにするために、新たな役割やくわりくわわって、2008(平成へいせい20)年に今の水道緊急きんきゅうたいという名前になりました。


―水道緊急きんきゅうたいの仕事について教えてください。

岡部おかべ隊長たいちょう はい。水道緊急きんきゅうたいには、3つの大きな使命があります。

💧災害さいがい発生時、首都機能きのうを守る

まず第1に、「東京の大切な施設しせつへつながる水道管すいどうかんがこわれたときは3日以内いないに直す」ことです。これが「水道緊急きんきゅうたい」に名前がわったときにくわわった役割やくわりです。日本の首都である東京には、日本の政治せいじ経済けいざいの中心となる施設しせつ建物たてものが集中しています。こうした施設しせつ建物たてもので水が出なくなれば仕事がつづけられなくなってしまいます。
日本は地震じしんの多い国と言われており、東京に大きな被害ひがいが予想されている地震じしんは、いつ起きてもおかしくありません。こうした地震じしんが発生し、国会議事堂ぎじどう、中央省庁しょうちょう、東京都庁とちょう、銀行や大きな病院などで水が止まったとき、水道緊急きんきゅうたいはすぐに出動し、3日以内いないに直して水を出します。

💧水道管すいどうかんがこわれた時に、必要ひつようなところに水をとどける

そして第2に、「応急おうきゅう給水きゅうすい」です。古い水道管すいどうかんはこわれて水がもれることがあります。また、ほかの工事などの事故じこ影響えいきょう水道管すいどうかんがこわれたり、地震じしん影響えいきょう水道管すいどうかん水道管すいどうかんをつなぐ部分がけて水もれが起こったりする場合もあります。こうしたときにもみなさんに水をとどけるのが「応急おうきゅう給水きゅうすい」です。

応急おうきゅう給水きゅうすいには、「給水車きゅうすいしゃ」を使います。給水車きゅうすいしゃは、水道水がためられるタンクをんだ車で、ポンプもついていておよそ3階まで水をとどけることができます。

💧24時間365日、都民とみんのみなさんの安心を守る

第3に、夜間や休日などで、水もれが起きたり、水が止まってしまったり、水がいつもとちがうなどの連絡れんらくを受けた場合、緊急きんきゅう対応たいおうします。

隊員たいいんは全部で100人いて、5たいにわかれています。事故じこ地震じしんなどは、いつ起こるかわからないので、5たいが交代しながら、24時間365日、一日も休むことなく、いつでも出動できるようにしています。

また、たくさんの水道管すいどうかんは道路の下にあります。道路の下で水もれがあると修理しゅうりするのはもちろん、修理しゅうりしたあと地下にあながないか調査ちょうさしたり、仕事で使う特別とくべつ機器ききをつくったりもしています。

さらに、万が一、大きな地震じしんが起こった場合にそなえて、東京の大切な施設しせつ建物たてもの)へ水道水を送るための水道管すいどうかん点検てんけん給水車きゅうすいしゃを使った水をとどける訓練くんれんも行っています。

水道局は、緊急時きんきゅうじにすばやく仕事ができるように、特別とくべつな自動車を持っています。その一部をご紹介しょうかいしましょう。

🚙給水車きゅうすいしゃ

水道が使えない地域ちいき施設しせつ建物たてもの)に水道水を運びます。水をためるタンクと水に圧力あつりょくをかけるポンプがついていて、高いところにも水を送ることができます。

2トンの水道水を運ぶ給水車きゅうすいしゃ
3トンの水道水を運ぶ給水車きゅうすいしゃ

🚙特別とくべつ緊急きんきゅう

事故じこ災害さいがいが発生すると現地げんちへ出動します。発電機はつでんき通信つうしん装置そうちそなえていて、万が一の時に事故じこ情報じょうほうをとりまとめる司令塔しれいとう役割やくわりたします。

特別とくべつ緊急きんきゅう車には、さまざまな道具がたくさんつめこまれている
特別とくべつ緊急きんきゅう車の運転席うんてんせき


🚙広報車こうほうしゃ

断水だんすいなどで水が出なくなった場合や水を使わないでほしいときに、地域ちいきのみなさんにお知らせします。特別とくべつ緊急きんきゅう車と広報車こうほうしゃにはパトカーのようなパトランプとサイレンがついています。


いざというときにそなえた訓練くんれん

―水道緊急きんきゅうたい訓練くんれんについて教えてください。

基本きほんとなる2つの訓練くんれんをご紹介しょうかいします。

💧水道水をとどける訓練くんれん応急おうきゅう給水きゅうすい訓練くんれん

応急おうきゅう給水きゅうすい訓練くんれんは、断水だんすいなどで水道が使えなくなってしまった場所に行き、給水車きゅうすいしゃを使って地域ちいきのみなさんへ水道水をとどけることを想定した訓練くんれんです。応急おうきゅう給水きゅうすいのためには、給水車きゅうすいしゃと「応急おうきゅう給水栓きゅうすいせん」とばれるじゃ口のついた水道管すいどうかんをホースでつなぎます。この応急おうきゅう給水栓きゅうすいせんで一度に何人もの人が水をくむことができます。

応急おうきゅう給水栓きゅうすいせんのじゃ口から水をくむ
東京都水道局の給水きゅうすいぶくろは、リュックのように背負せおって持ち運びできるように工夫くふうされている

💧高いところに水をとどける訓練くんれん高所こうしょ揚水ようすい訓練くんれん

建物たてものの高いところに水道水をためておくと、水が高いところからひくいところへ落ちる力(重力)を使って建物たてもの全体に水道水を送ることができます。

水が使えなくならないように、病院では、屋上などの高い位置いちに水道水をためるタンクがあります。水道管すいどうかんの工事や事故じこなどでタンクに水を送れなくなってしまったときのために、タンクに水をとどける訓練くんれんを行います。

地上の給水車きゅうすいしゃからホースを使って水を施設しせつ建物たてものの屋上にあげるため、作業にはチームワークがかせません。建物たてものの角などで水の流れが止まらないように工夫くふうし、スムーズに水がとどけられるよう訓練くんれんを重ねます。

地上の隊員たいいんとトランシーバーで細かく連絡を取り合う
高い場所で作業する隊員たいいんは安全ベルトを着ける

―出動するのは、東京都内だけですか?

岡部おかべ隊長たいちょう 東京都内が出動範囲はんいです。しかし、大きな災害さいがいがあったときは東京都以外いがいへ出動することがあります。昨年さくねん1月に石川県地方で発生した「令和れいわ6年能登のと半島地震じしん」のときは、応急おうきゅう給水きゅうすいのため現地げんちまで出動して、地域ちいきの方たちに水をとどける活動をしました。

社会をささえる“えんの下の力持ち”

水道緊急きんきゅうたいの仕事について、理解りかいできましたか?
みなさんの家ではじゃ口をひねると、水が出てきます。いつもそうであるために、東京都水道局の人がいつも調査ちょうさ点検てんけんをしてくれていて、水道管すいどうかんなどがこわれたときすぐに直してくれています。

岡部おかべ隊長たいちょうは「わたしたちがかけつけて水を配ると、みなさんから『ありがとう』という言葉をかけてもらいます。隊員たいいんたちはそれがすごくはげみになります」と笑顔えがおで話していました。みなさんの感謝かんしゃの声が、やりがいにつながっているそうですよ。

まさに“えんの下の力持ち”。こうした仕事をする人たちがいるからこそ、わたしたちは安心して家で水を使うことができることを、おぼえておいてほしいと思います。

取材しゅざい協力きょうりょく=東京都水道局

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