教えて先生！ 熱中症ねっちゅうしょう予防よぼうのためにできること

今年ことしも暑い日が増ふえてきて、夏が近づいてきたのを感じますね。海やプール、花火、夏休み…楽しいことがたくさんある夏。ですが、ここ数年は最高さいこう気温が35℃以上いじょうになる「猛暑もうしょ日」が増ふえ、危険きけんなほどの暑さのせいで、思うように外遊びができない日も多いでしょう。これには地球温暖化おんだんかが影響えいきょうしていると言われています。

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それに加くわえて、都市部はビルなどの建物たてものやアスファルトでおおわれた地面や道路が熱ねつをため込こみ、エアコンや車など、ふだんの生活の中から発生する熱風ねっぷうもたくさん出ます。こうして日中に温まった都市は、太陽の沈しずんだ夜の間も熱ねつを持もち続つづけるため、樹木じゅもくの多い地域ちいきに比くらべて、気温が高くなります。（これをヒートアイランド現象げんしょうといいます。）

暑くなり始めた今の時期からみなさんに気をつけてほしいのが、「熱中症ねっちゅうしょう」です。

熱中症ねっちゅうしょうはどうして起こるのでしょうか。また、熱中症ねっちゅうしょうの予防よぼうのためにはどんなことが大切なのでしょうか。そして、もし熱中症ねっちゅうしょうになったらどうしたらよいのでしょうか。熱中症ねっちゅうしょうの治療ちりょうに詳くわしい順天堂じゅんてんどう大学だいがく医学部教授きょうじゅの杉田すぎた学まなぶ先生にお話を聞きました。

熱中症ねっちゅうしょうはなぜ起こる？

―熱中症ねっちゅうしょうとはどんな病気でしょうか？

強い日差ひざしを受けるなどして体温が上がり、体にいろいろな異常いじょうが起こることを熱中症ねっちゅうしょうと言います。 熱中症ねっちゅうしょうで起こる体の異常いじょうには主に二つの状態じょうたいがあります。

一つは、体の中の水分が足りなくなる「脱水だっすい症状しょうじょう」です。もう一つは、体の中に熱ねつがこもってしまう状態じょうたいです。健康けんこうな人間の体には、気温が高くても低ひくくても、汗あせをかいて体温を下げるなど、体温をある程度ていど一定に保たもつ働はたらきがあります。熱中症ねっちゅうしょうになると、その働はたらきがうまくいかなくなって、体が熱あつくなってくるのです。重症じゅうしょうになると意識いしきをなくし、体の中にある内蔵ないぞうがうまく働はたらかなくなり、ときには命を落としてしまうような危険きけんな状態じょうたいになります。

―熱中症ねっちゅうしょうになるとどんな症状しょうじょうが出ますか？

軽い症状しょうじょうだと、大量たいりょうの汗あせが出てきたり、手や足がしびれたり、目がまわってふらふらする感覚や、周囲がふわふわした感じがする立ちくらみが起こったりします。よく「こむらがえり」と言いますが、足がつるなどして筋肉きんにくが痛いたくなったりすることも熱中症ねっちゅうしょうの症状しょうじょうのひとつです。また、気分が悪くなってぼーっとした状態じょうたいになることもあります。

症状しょうじょうが少し重くなると、頭がガンガンと痛いたくなったり、吐はき気けが出たりします。体がだるく、意識いしきがはっきりしないときもあります。軽い症状しょうじょうだと大量たいりょうの汗あせを出すと言いましたが、症状しょうじょうが重くなると、汗あせが出なくなってきます。そうなったらもう体から水分がなくなり、脱水だっすい症状しょうじょうになっているサインです。

もっと症状しょうじょうが重くなると、意識いしきがなくなり、水が飲めなくなります。呼よびかけても返事がおかしかったり、歩こうとしてもまっすぐに歩けなかったりすることもあります。体がどんどん熱あつくなってきて、ときには体がぶるぶると震ふるえだすこともあります。こんな症状しょうじょうになったらとても危険きけんです。すぐに救急車きゅうきゅうしゃを呼よぶ必要ひつようがあります。

屋外だけじゃない！ 車内や屋内にもひそむ熱中症ねっちゅうしょうの危険きけん

―熱中症ねっちゅうしょうにならないために、何に気をつければいいですか？

太陽の光を直接ちょくせつ受ける屋外では、体育の授業じゅぎょうや公園や運動場などの日よけがない場所での運動や外遊びには、気をつける必要ひつようがあります。また、車で外に出かけるときは、短時間でもこどもだけで車内に残のこらないように気をつけましょう。なぜなら、エアコンの効きいていない車内は熱ねつがこもり、とても高い温度になって危険きけんだからです。

また、熱中症ねっちゅうしょうの危険きけんがあるのは屋外だけではありません。熱中症ねっちゅうしょうは蒸むし暑い空間でも起こります。体育館など屋内で運動するときは、扇風機せんぷうきやサーキュレーターをまわして風通しを良よくしましょう。家にいるときもエアコンや扇風機せんぷうきを上手じょうずに使って快適かいてきにすごせるようにしましょう。また、寝ねるときもがまんせず、エアコンを使って快適かいてきに眠ねむるようにすることが大切です。

―自分や友だちが熱中症ねっちゅうしょうになったかな、と思ったらどうしたらよいですか？

手足がしびれたり、筋肉きんにくがつったり、頭がぼーっとしたり、立ち上がるとふらふらしたり。自分や友だちの体の「危険きけんのサイン」に気づいたら、まずは日陰ひかげや涼すずしい場所に避難ひなんして、近くの大人おとなに声をかけて助けを求もとめましょう。
そして、冷つめたい水やお茶を無理むりのない速さで飲むようにします。ぬらしたタオルや冷つめたいペットボトルなどを、首筋くびすじやわきの下、足の付つけ根ねにあてて、体を冷ひやすのも効果こうかがあります。吐はき気けがしたり、呼よびかけても返事がおかしいときは危険きけんです。すぐに救急車きゅうきゅうしゃを呼よんでください。

外に出るときは帽子ぼうし、こまめに水分

―ふだんからできる熱中症ねっちゅうしょう対策たいさくはありますか？

栄養えいようが不足ふそくしていたり、寝不足ねぶそくだったり、体が疲つかれていたりすると、熱中症ねっちゅうしょうになりやすくなる、ということがわかっています。だから、対策たいさくとしてはまず、十分な睡眠すいみんと食事で体調を整えておくことが大切です。そして、のどが渇かわく前にこまめに少しずつ、水分補給ほきゅうするようにしてください。適度てきどな塩分えんぶんもとれるとより効果的こうかてきです。甘あまい飲み物を大量たいりょうに飲みすぎないように注意しましょう。

また、外出するときは水分補給ほきゅうのための水筒すいとうを持っていくことに加くわえて、帽子ぼうしをかぶるようにしましょう。できれば、首の後ろが隠かくれて日差ひざしが直接ちょくせつあたらないような帽子ぼうしが良よいと思います。

そして、危険きけんな暑さを事前に知らせる「熱中症ねっちゅうしょう警戒けいかいアラート」をおうちの人とチェックしましょう。学校によっては、熱中症ねっちゅうしょうになることを防ふせぐため、屋外での体育の授業じゅぎょう内容ないようを変更へんこうしたり、運動会などのプログラムの変更へんこうや時間短縮たんしゅくを行ったりしています。周囲しゅういの大人おとなの指示しじに従しがたって、外での無理むりな活動はしないようにしましょう。

―さらに注意が必要ひつようなことはありますか？

アスファルトなどからはねかえる熱ねつにも注意が必要ひつようです。こどもや車いすを利用りようしている方などは、地面に近いため、より注意が必要ひつようです。まだ体の機能きのうが十分に発達はったつしていないこどもは、大人おとなに比くらべて、外からの熱ねつで受ける影響えいきょうは大きく、大人おとなよりも熱中症ねっちゅうしょうになりやすいです。

みなさんも暑い日の外出や、運動をするときは、なるべく風が通とおり抜ぬける涼すずしい場所で遊ぶように気をつけ、水分をこまめにとり、適度てきどな塩分えんぶんもとるようにしてください。

暑さに負けない体づくりを大切に

夏の暑さから体を守るためには、熱中症ねっちゅうしょうの危険きけんを意識いしきして避さけることが必要ひつようです。暑さが本格ほんかく化する前から、十分な睡眠すいみんと食事で体調を整え、暑さに負けない体づくりを心がけましょう。危険きけんな暑さを知らせる「熱中症ねっちゅうしょう警戒けいかいアラート」が出ている日はできるだけ外出をしないようにして、エアコンや扇風機せんぷうきを活用しながら暑さから体を守って、暑い季節きせつを元気に過すごせるといいですね。

取材しゅざい協力きょうりょく・監修かんしゅう＝順天堂じゅんてんどう大学だいがく医学部附属ふぞく 練馬ねりま病院副ふく院長 救急きゅうきゅう・集中治療ちりょう科教授きょうじゅ　杉田すぎた 学まなぶ先生
取材しゅざい協力きょうりょく＝東京都 保健ほけん医療いりょう局、環境かんきょう局、東京消防庁しょうぼうちょう、教育庁きょういくちょう