2025年11月号
世界レベルの戦いに感動、もり上がった世界陸上
世界陸上競技選手権大会(世界陸上)は、世界中のトップアスリートが陸上競技で競い合う2年に1度の大会です。オリンピックと並ぶとても大きな大会で、日本で行われた世界陸上は、1991年の東京大会、2007年の大阪大会に次いで、今回が3回目でした。東京・国立競技場で、9月13日から21日まで開かれ、9日間で約62万人もの人が訪れました。女子20キロ競歩・藤井菜々子選手の銅メダルや男子400メートル・中島佑気ジョセフ選手の日本新記録更新、男子4×100メートルリレーの熱い走りなど、記憶に残るシーンが数多くありました。193か国・地域+難民選手団から、1992名の選手が参加し、世界一を目指した大会を、東京都に住む小学生二人が観戦しました。
大歓声が響くスタジアム、拍手の波に驚き
大会を観戦したのは、けんとさん(小5)とひなたさん(小4)。大会初日の9月13日、開会式と男子3000メートル障害物の予選、女子走幅跳の予選を応援しました。
大屋根に日本産の木材がふんだんに使われている国立競技場。そのほとんどが観客でいっぱいとなる中で、おごそかに開会式が始まりました。二人とも国立競技場を訪れたのは初めて。「すごく広い!」「こんなにたくさん観客がいておどろきました」と興奮した様子。

男子3000メートル障害物の予選が始まると、二人は選手の走りにくぎ付け。選手たちが目の前をかけぬけるたびに周りの歓声と拍手が一段と大きくなり、反対側へ走っていくとともにその音が遠ざかっていく感覚が、「拍手が波のように押し寄せてくるみたい!」とびっくり。日本人選手が出場した組では、ほかの観客と一つになって「がんばって!」と声援を送りました。
走幅跳などのジャンプした距離や高さを競う競技では、選手が両手を挙げて観客に手拍子をうながすと、スタジアム全体が手拍子でこたえます。二人もみんなといっしょに大きな手拍子を送りながら、選手の力強いジャンプを身を乗り出して応援しました。
「何万人もの観客が見ている中で、すごくプレッシャーがあると思うけれど、一生けん命がんばっている選手たちの姿に感激します!」
「3000メートル障害物って初めて見ました。水たまりを越えたり平均台みたいな障害物を乗り越えたりしながら3000メートルも走るのに、少しもスピードが落ちないことがすごいですね!」
目の前で行われる世界レベルの戦いに大興奮!

💡豆知識
もっと速く走るには?「スポーツドリル」を読んでみよう!
世界陸上の選手たちのように速く走ってみたい!そんな人は、「スポーツドリル」を読んでみましょう。背筋をまっすぐにする、大きな力で地面を押す、ひざを前に素早く運ぶなど、速く走るためにはいろいろなポイントがあります。ドリルの内容は、東京都の特設ページからダウンロードできるほか、動画でもトレーニングメニューを紹介しているので、ぜひ挑戦してみてくださいね!

国立競技場周辺は「世界陸上」一色に
国立競技場周辺にはさまざまなブースが出ており、活気とにぎわいがありました。また、国立競技場南側にある「都立明治公園」には、だれでも楽しめる体験型コーナーがたくさんあり、世界陸上と11月に行われるデフリンピックをもり上げていました。二人もさっそくチャレンジ!

言葉を文字で伝えるユニバーサルコミュニケーション技術を体験
ここは、言葉を文字で伝えるユニバーサルコミュニケーションの体験ブースです。ここで体験できるのは、話した内容が文字になり、ディスプレイに表示される最新技術です。
ディスプレイに向かって話しかけると、その言葉が文字になって表示されます。これを使えば、耳がきこえない・きこえにくい人ともコミュニケーションをとることができます。
日本語だけでなく、30か国以上の外国語にも対応しているそうです。会場内には、だれでも使えるように、こうしたディスプレイやタブレットが置かれている案内所がありました。

次に訪れたのは「デフスポーツ体験」。デフスポーツとは、耳がきこえない・きこえにくい人たちのスポーツのことです。
デフ陸上競技では、ピストルの音とともに、光の色もスタートの合図にします。赤色の光は「位置について」、黄色の光は「用意」、そして緑の光が「スタート」の合図です。二人も、光の色を使ったスタートに挑戦!周りの音が聞こえないようにヘッドホンをして、光の合図に集中します。


「色を見て走り出すのは、いつもとちがって難しいね」「音がまったく聞こえないと、だれもまわりにいない感じがして少し不安になります」と、デフアスリートたちの世界を体験することができました。
レース用の車いす体験では、三輪の「レーサー」を実際にこいで、スピードを計りました。レース用の車いすは、その性能が選手の勝敗を大きく左右します。レースでは、激しい競り合いの中で車いす同士がぶつかることもよくあります。つまり、スピードを出すための「軽さ」と、ぶつかっても負けない「強さ」の両方が必要となるため、日々改良を重ねています。二人は、「手を使って車輪を回すのですが、思っていたより重かった」「少し動かすだけでも手が痛くなりましたが、選手たちは時速40キロメートル以上のスピードを出すと聞きました」と選手たちのパワーにびっくり。


「VRサイクリングチャレンジ」は、大きなディスプレイに映る風景を見ながら、国立競技場までのコースを自転車で走る体験ができるコーナーです。
自転車をこぐと、ディスプレイのコースもどんどん進んでいきます。
挑戦した二人は、「スピードを出すために一生けん命に自転車をこいだので、とてもつかれました」とそろって話しました。
このほかにも、立ち幅とび、反復横とび、投球フォームなどの測定結果から、その人にぴったりのスポーツを教えてくれる「DigSports(ディグ・スポーツ)」、選手が練習でも使う「ジャベリックボール」を的に向かって投げる「的当て!やわらかやり投げ」などを楽しみました。
「むずかしくてうまく的に当てられなかったけれど、『やわらかやり投げ』が楽しかったな」
「サイクリングチャレンジがおもしろかった。自転車でレースみたいに長い道のりを走ったのは初めてだったけれど、とても楽しかったです」
二人とも、さまざまな体験ができて大満足です。


とてももり上がった世界陸上。今度は、11月に東京都内の各会場で、耳のきこえない・きこえにくいアスリートのための国際スポーツ大会「東京2025デフリンピック」が開かれます。各競技は無料で観戦できるほか、駒沢オリンピック公園中央広場では、11月22日(土)~24日(月)の3日間、アスリートとの交流やデフスポーツ・パラスポーツの体験などが楽しめるイベント「スポーツFUN PARK スポーツとサステナブルライフの祭典」も行われます。
また、国立オリンピック記念青少年総合センターに設置される大会の運営拠点「デフリンピックスクエア」では、デフスポーツやろう者の文化への理解を深めることができたり、ユニバーサルコミュニケーション技術を体験できたりと、さまざまなプログラムが楽しめます!ぜひ、足を運んで体験してみてくださいね。
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