2025年11月号
会場で応援しよう!東京2025デフリンピックがやってくる!
「東京2025デフリンピック」が、いよいよ今月15日から(※)都内各所と福島県、静岡県の会場で始まります。デフリンピックは、耳がきこえない・きこえにくいアスリートのための国際スポーツ大会です。世界の70~80か国・地域から約3000人の選手が東京に集まり、日本で初めての開催となる今回、デフリンピックは記念すべき100周年大会となります。みなさんがくらす東京で、世界中のいろいろな人たちとふれあうことのできるチャンスでもあります。手話言語にふれたり、会場に行ったりして、みなさんもいっしょにもり上げましょう!
※Jヴィレッジ(福島県)では、14日からサッカーの試合が行われます。
デフ卓球・亀澤理穂選手に聞いたデフリンピックの注目ポイント
デフリンピックでは、陸上競技や水泳、バレーボールやバスケットボール、テニスや卓球など、みなさんが知っている競技もたくさんあり、会場もさまざま。たとえば東京体育館では、開会式と閉会式、卓球が行われます。
これまでのデフリンピックに4大会連続で出場し、銀3個、銅メダル5個の計8個のメダルを獲得した卓球の亀澤理穂選手に、東京2025デフリンピックの見どころやご自身の意気ごみを聞きました。「周囲がもり上がってきました。試合への緊張よりも、楽しみな気持ちの方が大きいです」

「これまで取れなかった『忘れ物』を取りに行くつもりです。目標は「金メダル」。けれど一番強く思っていることは、この大会をきっかけに、『耳のきこえる・きこえにくい・きこえない』ということにとらわれない社会になっていったらいいなということです」
小学生の娘がいる亀澤選手。「金メダルを娘の首にかけて、一緒にこの大会の結果を祝えるようにがんばりたい」と語ってくれました。
デフスポーツと他のスポーツとの一番大きなちがいは、「音」の合図とともに、「見て」わかる工夫をすることです。デフスポーツは、「音のないスポーツ」ともよばれ、選手たちは補聴器を外してプレーします。亀澤選手は、デフスポーツの特徴を「卓球で説明すると、直径4センチのボールに印刷されている小さなマークの見え方のほか、相手の手や足の動きと表情など、視覚だけですべてのプレーを判断し、反応すること」と話します。

補聴器を外してプレーすることについては「みなさんに伝わりやすくするとしたら、真っ暗な空間の中で相手と一対一で向かい合っているようなイメージ。ぜひ想像してみてください」と教えてくれました。真っ暗な中で突然飛んでくるボールを打つこと、みなさんはできそうですか?
東京2025デフリンピックを見に行こう!
東京2025デフリンピックは、都内のほか、福島県・静岡県を含む複数の競技場で行われます。(※)事前の申しこみが必要なく、だれでも無料で観戦できます。
※開閉会式については、チケットに当選した方のみ観覧できます。抽選はすでに終了しています。
※射撃は、会場での観戦はできません。

①東京体育館(開閉会式・卓球)
②駒沢オリンピック公園総合運動場(陸上競技・ハンドボール・バレーボール)
③大井ふ頭中央海浜公園陸上競技場(ハンマー投)
④東京高速道路及び首都高速道路高速八重洲線の一部(マラソン)
⑤大田区総合体育館(バスケットボール)
⑥大森ふるさとの浜辺公園(ビーチバレーボール)
⑦日比谷公園・日比谷エリア(オリエンテーリング)
⑧有明テニスの森(テニス)
⑨東京アクアティクスセンター(水泳)
⑩若洲ゴルフリンクス(ゴルフ)
⑪東京武道館(柔道・空手)
⑫味の素ナショナルトレーニングセンター・イースト(射撃)
⑬中野区立総合体育館(テコンドー)
⑭京王アリーナTOKYO(武蔵野の森総合スポーツプラザ)(バドミントン)
⑮府中市立総合体育館(レスリング(フリースタイル/グレコローマン))
⑯東大和グランドボウル(ボウリング)
⑰伊豆大島(裏砂漠)(オリエンテーリング)
⑱日本サイクルスポーツセンター(自転車競技(ロード/マウンテンバイク))
⑲Jヴィレッジ(サッカー)
それぞれの競技会場では、障害のあるなしや言語のちがいに関わらずコミュニケーションが取れる「ユニバーサルコミュニケーション技術」を活用した機器が設置されます。
たとえば、タブレットたん末の翻訳機能を使い、スタッフが各国の選手や観客を案内するほか、窓口に多言語対応のディスプレイが設置されたり、観客席などに大きく文字を表示するディスプレイが置かれたりします。アスリート同士だけでなく、会場のみなさんがスムーズにコミュニケ―ションが取れるようになります。ぜひ体験してみてくださいね。

大会の運営拠点として国立オリンピック記念青少年総合センターに設置される「デフリンピックスクエア」では、だれもが楽しみ交流できるデジタル技術にふれることができる「みるTech(みるテック)」が行われます。ここでは、ユニバーサルコミュニケーション技術やVR(バーチャル・リアリティ)などが展示されます。
そのほかにも、デフスポーツやろう者の文化への理解を深めるさまざまなプログラム、スタンプラリーやホールコンテンツなど、見どころがもりだくさんです。ぜひ足を運んでみてください。
◆東京2025デフリンピック観戦ガイドもチェック!
この大会で注目・応援したい日本代表選手を、さまざまなデフ競技のアスリートとの交流が深い亀澤選手が教えてくれました。
「バレーの長谷山優美選手は、所属先が同じこともありますが、10歳年齢が離れているのに、何でも相談出来てしまう存在です」。亀澤選手と長谷山選手は、お互いの活躍を約束しあっているそうです。また、「サッカーの岡田拓也選手は、明るくてポジティブにチャレンジしていくところが注目ポイント」と語り、亀澤選手と親交が深い女子バスケットボールの丸山香織選手と若松優津選手の二人には「メダルに向けての緊張感も試合の一部だととらえて楽しんでほしいですし、同じ屋内競技のバスケットボールの試合をまだ見たことがないので、会場での生の迫力を味わってみたい」と話してくれました。

亀澤選手は、日本人選手の活躍に注目してもらいたいほか、「デフリンピックが東京で行われたことをゴールとせず、この大会をきっかけに、きこえる人・きこえにくい人・きこえない人がそれぞれを思いやる大切な機会、お互いを思いやるスタートと考えてもらえればうれしい」と話してくれました。
デフ選手を「サインエール」で応援しよう!
スポーツの応援は声を出したり、手をたたいたりして、音に頼るものが多く、きこえない・きこえにくいアスリートによる「デフスポーツ」では、応援方法が限られていました。実際に、現役のデフアスリートからは、「声援はうれしいがあまり伝わらない」「もしも応援を感じ取れたらもっと力になる」などの声も上がっています。そうした声をかなえるため、ろう者を中心にしたメンバーとデフアスリートたちがいっしょにつくったのが「サインエール」です。サインエールは、声のかわりに、手や体の動きを使って応援の気持ちを届けます。きこえる・きこえないにかかわらず、全ての人がデフアスリートに応援の想いを届けることができる新しい応援方法です。
みなさんも試合会場に足を運んで、デフアスリートのがんばりをサインエールで応援してみましょう。
東京都にゆかりのある選手もたくさん。どんな選手がいるかホームページでチェックして、しっかり応援する準備をしておくのもいいですね。
◆サイト内「ゆかり選手紹介」からチェック!東京ゆかりデフアスリート応援サイト
💡豆知識
国際手話と日本手話言語
「手話言語」は耳のきこえない・きこえにくい人たちの生活の中で生み出された「手のことば」です。顔の表情や体の動きをあわせることで、感情を豊かに表現することもできます。話し言葉が国や地域によって異なるのと同じように、手話言語にも国や地域によってちがいがあります。「国際手話」は、世界的な交流の場である「世界ろう者会議」や、今回のデフリンピックで公用語として使われていて、各国の手話表現を基にした「しぐさ・ジェスチャー」に近い表現です。たくさんの国の人にとってわかりやすいように、さまざまな国の手話言語や身ぶりなどをもとにつくられました。
デフリンピックは、世界の人たちが集まり、多様な文化や手話言語を学べる貴重な機会です。また、いろいろな人と最新の技術や工夫でつながることも、デフリンピックの楽しみの一つです。東京2025デフリンピックを観戦して、選手たちにたくさんの応援を送りましょう!
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